INTERVIEW | 2022.10.31
Ahonen & Lambergとのコラボレーション10周年。
これまでの歩みを振り返り表現した現在から、続くその先へ。
2013年秋冬から、コレクションピースのグラフィックデザインや、ショーインビテーション、ルックブックデザインなど、クリエイティブなコラボレーションを続けている、パリ拠点のデザインスタジオAhonen & Lamberg。コラボレーション10周年となる今年は、カプセルコレクションを発表し、「JOHN LAWRENCE SULLIVAN 渋谷パルコ店」にてポップアップを開催。これまでの作品を特別編集したアイテムやこのために用意されたオリジナルグラフィックアイテムなど計8アイテムを展開しています。
今回は、来日を果たしたAnna Ahonen・Katariina Lambergの2人とデザイナー柳川荒士の対談をお届けします。
■カプセルコレクションの詳細はこちら:
Ahonen & Lamberg
Ahonen & Lamberg は、2006年にフィンランド人デザイナーのAnna Ahonen(アンナ・アホネン)とKatariina Lamberg(カタリーナ・ランバーグ)によって設立されたパリを拠点とする複合的なデザインスタジオ。アートディレクション、クリエイティブコンサルティング、グラフィックデザインを中心に、グローバル企業、雑誌、ラグジュアリーブランドから若手アーティスト、ファッションデザイナーまで幅広いクライアントを持つ。
スタジオの目的は、印刷物、デジタル、製品、環境など、あらゆるメディアを通じて、クライアント特有の世界観を表現すること。仕事の核心に迫るリサーチと分析のプロセスに基づき、絶え間ない対話を行います。クライアント固有の背景や哲学、そして各プロジェクトのニーズを探ることで、革新的でテーラーメイドのクリエイティブ・ソリューションを生み出します。
Ahonen & Lamberg のデザイン理念は、クラシカルなデザインとオルタナティブなデザインのバランスをとることであり、常にエレガントでわかりやすく、かつ驚きに満ちたトーンを創造することです。
最初の結び付きについて
柳川荒士(以下、柳川):実は、2013年秋冬シーズンでご一緒する前に、2010年にファッションの枠を超えた表現をするプロジェクト「THE SULLIVANS | ザ サリバンズ」で一度グラフィックをお願いしています。その時、彼女たちは野菜をコラージュして”人の脳”の形を表現してくれたのですが、その時のインパクトが強烈に残っています。今でもプリントして事務所に飾っているほどです。それから2人がパリで展示会を見にきてくれて、意気投合したといいますか、より深くお仕事をご一緒したいなと思いました。
Katariina Lamberg(以下、Lamberg):「ザ サリバンズ」での仕事は私にとっても印象深いものでした。荒士さんからの”3つのキーワード”に対して、私たちなりに答えを模索しました。辿り着いたのは“究極の愛”。実はかなり過激なモチーフなので深い言及は避けますが(笑)。
Anna Ahonen(以下、Ahonen):その後共通の友人を通じで、展示会でアイテムを見る機会がありました。まず、惹かれたのはテーラーリングの美しさ。そしてそれが日本で作られていると聞いてさらに驚きました。「ザ サリバンズ」で一度ご一緒していますが、直接会ったわけではないので、どのようなデザイナーなのかとても興味が湧いたんです。
柳川:「ザ サリバンズ」の際に、コラボ候補のアーティストの作品リストを見ていて、純粋に惹きつけられた作品があり、後日それが彼女たちの作品だったことを知り驚きました。
Ahonen:とても“運命”的だと感じますね。
モードを通じたコール&レスポンス
Lamberg:「ジョンローレンスサリバン」は夢のようなクライアントです。決して誇張ではなく。荒士さんとはじめて出会った時も、フランス語の通訳を介してでしたが、まるでテレパシーのようにお互いの考えていることが通じ合っていると感じました。加えて、彼自身がブランドのコンセプトや未来についてはっきりしたビジョンを持っていると思ったので、お仕事を依頼された時は二つ返事で、迷うことはなかったです。
Ahonen:クライアントと仕事をする上で一番大事なものの一つがコミュニケーションです。共通理解がないとどこかで齟齬が出てきてしまいます。荒士さんからはよく総柄のグラフィックを作ってくれとお願いされるのですが、「またグラフィックを作るの!?(笑)」と思いながら、チャレンジングなリクエストとして受け取って、制作しています。
柳川:毎回、彼女たちの提案には驚かされます。パリでショーをやったときに毒々しい花柄が欲しいなと思ったのですが、それも非常に印象に残るものを作ってくれました。ファーストインパクトが強烈なので戸惑うこともあるのですが、コンセプトを聞くとストンと腑におちて、「これで行こう!」と思えるんです。
Lamberg:荒士さんを驚かすことが好きなんです(笑)。それに喜んで欲しいなといつも思っています。紆余曲折ある時もありますが、共通理解があるので大抵はスムーズに物事を進めることができるんです。また、自由にデザインさせてもらっているので、いつも楽しみながら仕事ができています。
コラボレーションの道のりを形として残す
柳川:2013年秋冬から10周年の今年、コロナウイルスによる海外からの入出国規制も緩和され、彼女たちもちょうど来日するというので、何かこれまでの歩みを形として残したいなと思いました。今回のカプセルコレクションは、彼女たちが作った過去作品が元になっています。
Ahonen:白黒モチーフのグラフィックが2020AW、ミックスカラーのグラフィックが2018AWのものです。それぞれ今秋冬のテーマである「DECADENTS」に合うように、新しくデザインし直しています。
柳川:2018AWにデザインしたミックスカラーのモチーフはシルクのワンピースなどでしたが、今回はファンの方々含めていろんな方に手に取ってもらいたいので、シャツの生地はコットンを採用し、シルエットもゆったりと着られるようにしています。
DETAILS
2020AWのアーカイブから。当時の作品はベージュを下地に白黒の花柄を採用していたが、今回はモノクロで表現することでより「DECADENTS」というテーマに沿うものになっている。
2018AWアーカイブから。当時の作品はより彩度の高い華やかなもの。総柄のワンピースなどに作用された。今回は「DECADENTS」に合わせてよりアンダーな色味で表現されていて、どこか水墨画を思わせるようなニュアンスも備える。
Anna Ahonenがフィンランドのとある島で撮影したのもの。鳥の死骸をモノクロプリントで表現。こちらも破壊と想像の循環を想起させるイメージとなっている。
Anna Ahonenが嵐の前の海を捉えたもの。オリジナルの作品は重々しいムードだが、Tシャツやトートバッグはやや明るいピンクのプリントで、どこか多幸感も漂う仕上がりに。
柳川:今回のカプセルコレクションは、ファンの方たちにも見覚えのあるものがいいなと思い、柄の選定などを進めました。なるべく多くの方に楽しんでもらいたいので、ハンカチやTシャツ、トートバッグなど手に取りやすいアイテムも用意しています。アイテムを身につけることで彼女たちの作品を楽しむとともに、コミュニケーションのひとつとして解釈してもらえればうれしいです。
JOHN LAWRENCE SULLIVAN渋谷パルコ店
コラボレーションは今後も続いていく
柳川:今年は彼女たちとの関係もひとつの区切りとなりましたが、来年はブランド創立20周年にあたります。何か面白いことができればいいなと、いろいろと進めている最中です。またパリでショーができればいいなと思っています。
Ahonen:盛大にお祝いでしたいですね。もし日本でやる際はフランスから友人知人をたくさん呼ぶのもいいですね(笑)
Lamberg:「ジョンローレンスサリバン」そして荒士さんとの仕事はとてもエキサイティングで、双方いい刺激になっています。これからもいい関係で仕事が続いていくことを願っています。
Text : Ryuta Morishita
Photo : Hideyuki Seta
Edit : Fumiya Ide(RUBYGROUPe)
Translate : Riho Watanabe(RUBYGROUPe)